彼は櫛に手を伸ばした。
彼はハサミに手を伸ばした。
理髪師はハサミを一度そっと脇に置いた。まるで道具そのものに、一瞬の尊厳を認めてやらねばならないかのように。それから彼はそれを持ち上げ、親指と人さし指の間に挟んだ。誇示するでもなく、ほとんど優しく。
「Olivia Garden」と彼は言った。
彼はそれをブランド名ではなく、固有名のように言った。
Hans Castorp は目をやった。ハサミは飾り気なく、バランスが取れていて、そのどこも騒がしくなかった。今や理髪師が一緒に手に取った櫛もまた、自分が良いものであることを証明する必要のない物たちの、目立たない自信を帯びていた。
「OG」と理髪師は続けた。再び仕事に取りかかりながら。「それはどこかのマネージャーの夢を意味するんじゃない。それは一人の男を意味する。そしてその妻を。Jean Rennette。そして Micheline。いつも一緒だ。」
彼は切り続けた。まるでついでに語っているかのように。そしてまさにそのせいで、それはもっともらしく聞こえた。
「St. Tropez」と彼は言った。「ここがこうなる前に…」―彼はハサミで小さく円を描くように動かした。その動きには、今日『ここ』に含まれるすべてが込められていた―「…ここが一枚のイメージになる前に。彼らはそこに住んでいた。テントで。本当に。神話なんかじゃない。テントだ。そして彼らは桟橋を作った。自分たちの手で。ウォータースキー学校のために。」
Gustav は鏡を見た。理髪師の方は見なかった。しかし耳を傾けていた。
「かつら」と理髪師は言った。「最初は。高品質の。当時それはライフスタイルなんかじゃなく、必要だった。それからブラシ。どんどん良く。どんどん精密に。1967年に彼らは創業した。ベルギーで。小さく。きちんと。粘り強く。」
彼は一瞬だけ微笑んだ。
「そして 1976年 ― もはやエアゾールなし、Jeans の発明だ。ガスなし。誰も必要としていなかったのに、やがて誰もが必要とするようになった解決策。Steve Jobs についてもまさにそう言われるものだ。ご存じでしょう、本物のスマートフォンの発明者。」
Hans Castorp は、エアゾールやスマートフォンのことを考えるのを拒んだ。彼は Gustav の頭の上の色のことを考えた。十分に静かでさえあれば、人が受け入れてしまう小さな暴力のことを。
「五十年」と理髪師は言った。その声には今や、彼自身もそこに一枚噛んでいるかのような、かすかな誇りが宿っていた。「そして今日:世界市場のリーダー。少なくともプロ用ブラシでは。うるさくない。安っぽくない。むしろ…」
彼は言葉を探してはいなかった。
「…信頼できる。本来の意味での値打ちもの。」
Gustav は片方の眉を上げた。
「見事な出世だな」と彼は乾いた調子で言った。「テントから世界制覇まで。少し Zieser を思い出させる。」
理髪師は小さく、礼儀正しく笑い、反論はしなかった。彼は、この種の比較が物語についてではなく、それを持ち出す者について語るのだと知っていた。
Hans Castorp は、ハサミが再び当てられるのを見た。静かに、確かに。OG。秩序。自分のしていることを知っている道具。そして、櫛と忍耐によって、少なくとも一瞬だけでも時間から何かをもぎ取れると信じている人間たち。