カウンターの向こう側では、世界は違っていた。
ホールの音はまだ聞こえていたが、くぐもっていた。声、キャリーバッグ、グラスの触れ合う音、「すべては管理下にある」と告げるあの機械の唸り。しかしここ、ドアの向こうでは、紙とプリンターの熱、コーヒー、洗剤の匂いがした。ここには体験ではなく、仕事の匂いがした。
細い通路が、部屋へと続いていた。その部屋は部屋であろうとせず、ただ一つの機能であろうとしていた。バックオフィス。
そこには机が並んでいた。モニター。ファイル。歯のように、きちんと列をなして並んだキーカードの棚。壁には一枚の表が掛かっていた。到着、出発、VIP、苦情、要望。その言葉はあまりに中立的であるがゆえに、かえってどこか冷たさを帯びていた。
Kautsonik は、教会に入るかのように中へ入った。
彼は速くも遅くも歩かなかった。いつも通りに歩いた。そして Hans Castorp は、この男がどんな住まいよりも、この部屋の中でこそいちばんくつろいでいるのだと感じた。
「ここが」Kautsonik は言い、モニターの上を小さく示す仕草をして、「心臓部です。」
Hans Castorp は画面を見た。一つにはリストが表示されていた。名前、部屋番号、到着時刻、出発時刻。別の一つにはプロフィール。三つ目にはカレンダーのように見えるシステムがあり、時間ではなく人間を管理していた。
「ゲストリレーションズ。」と Hans Castorp は、Kautsonik というよりは自分に向かって言った。
Kautsonik はうなずいた。
「そうだ。」と彼は言った。「そう呼ばれている。昔は『受付』と言った。それはもっと正直だった。受付とは『君が来て、私は君を受け取る』という意味だ。リレーションズとは『君は一つの関係性だ』という意味になる。」
彼は「関係性」という言葉を、信じていないことをうかがわせる抑揚で口にした。
Hans Castorp は一歩近づいた。彼の視線は、机の上で開かれている一冊のファイルに落ちた。表紙には大きな文字でこう書かれていた。ヒストリー。