彼らはさらに歩き続け、道は柵のそばを通っていた。柵の向こうには牛が立っていた。大きく、のろまで、ただ問いを持たぬ動物だけが持つあの静かなまなざしで。1頭の牛が頭を上げ、3人を見て、世界そのものを噛んでいるかのように反芻した。そして Hans Castorp は思わずこう考えた。ライオンならこの静けさをねたむだろう、と。
「ご覧なさい」と Dr. AuDHS は言い、講義の例でも示すように牛を指さした。「システム1。刺激 – 反応。噛め – 生きろ。」
Morgenstern はほほえんだ。
「では僕たちは?」と彼はたずねた。
「我々はね」と Dr. AuDHS は言った。「不運にもシステム2を持っている。我々は噛むということについて考えることができる。噛むことを最適化することができる。自分は十分に噛んでいるかと自問することができる。そしてその結果、前より下手に噛むようになる。」
Hans Castorp は小さく笑った。それがあまりにばかばかしく、だからこそ真実だったからだ。
Morgenstern はふと立ち止まり、自分たちの靴のまわりに生えている草を見つめ、ほとんど独り言のように言った。
「緑だ。」
「緑ですね」と Dr. AuDHS は確認した。
Hans Castorp は指の輪を感じた。それがまるで3人目の会話の相手であるかのように。そして彼は音楽室のあの一文を思い出した。外では現在が緑で立っていた。内では言葉となって立っていた。
「それでもね」と Morgenstern は言った。今度はまた真剣な声で。「青だと言う人たちがいる。そう信じている人たちが。そして僕にもそう信じさせたい人たちが。」
Dr. AuDHS は彼を見つめた。
「そのとき」と彼は言った。「問うべきなのは『草は何色か』ではありません。」
Morgenstern は眉を上げた。
「では何を?」と彼はたずねた。
Dr. AuDHS はとても静かに言った。
「こうです。なぜあなたは、草の色をめぐって争う草原の中にいるのですか、と。」
それは一文であった。親愛なる読者よ、親愛なる読者よ、あまりに単純であるがゆえに残酷に響く一文であった。というのも、それは責任の所在をずらすからだ。こう告げるからだ。立ち去れ、と。そして立ち去ることは、Hans Castorp も学んだように、ときに戦うことよりも難しい。戦うことには少なくとも、そこに自分が存在しているという感覚があるからだ。
彼らはさらにしばらく歩き続けた。やがて施設がまた近づき、その大きな建物が姿を現した。自信に満ちた市民的な重厚さで、まるで健康のために村をひとつ建てることが世界でもっとも自然なことでもあるかのように。
道の端には小さな札が立っていた。その上には、親しげな書体で、歩数について何やら書かれていた。歩数、運動、アクティビティ。そして Hans Castorp は思った。ここでは散歩でさえ、ただの散歩ではない。ひとつのモジュールなのだ、と。
彼は自分の指輪を見つめた。
輪は――もちろん――青だった。
彼はほほえんだ。
そのほほえみは丁寧なものだった。
そして少しばかり味気なかった。
というのも草は緑だったからだ。
そして自分の人生は、と彼は思った。おそらくその両方なのだ。緑であり青でもある。現実でありディスプレイでもある。システム1でありシステム2でもある。ロバでありトラでもある。
そしてそのどこかあいだで、とても静かに、疲れきった1頭のライオンがいる。